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小児科専門:一般診療・乳児健診・予防接種 

 

風邪薬について

当クリニックにおける、風邪薬についての考え方です。
 風邪で受診をすると、色々なお薬を処方されることが多いと思います。咳止め、痰や鼻水の薬、アレルギーの薬、気管支拡張薬(テープなど)、また抗菌薬を出されることもあるかもしれません。
では、どのような効果があるのでしょうか?

  1. 昔から使われている咳止めや去痰薬の効果は限られています。
    残念ながら風邪の治療に有効な根拠がありません。
    リン酸コデインは強力な咳止め効果がありますが、副作用が強いため12歳未満の小児に使用は禁忌になっています。
  2. 鼻水に対してアレルギーの薬を出されることがあります。
    アレルギー性鼻炎による鼻水には効果がありますが、風邪の鼻水には効果はほとんど期待できません。薬の種類によって、眠気やけいれんを長引かせる副作用があります。
  3. 気管支拡張薬のテープは気管支喘息に効果がありますが、風邪による咳には効果がほとんどありません。また、副作用として動悸や手の震えや興奮などあります。
  4. 抗菌薬(抗生物質)は細菌感染の治療薬です。
    風邪の原因となるウイルスには200種類以上ありますが、ウイルスに対して無効です。

 
◎風邪の症状に対して有効な治療法はあるのでしょうか?
残念ながら、実は「咳止め」や「鼻水止め」は、風邪の咳や鼻水には効かないのです。

  1. 風邪の原因であるウイルスそのものに有効な治療薬はありません。
    ウイルス治療薬としてあるのはインフルエンザと水ぼうそうと限られた病気です。
  2. 発熱や頭痛には、鎮痛解熱薬が有効です。
    効果は数時間ほどですが、つらいときは1日3回まで使用できます。無理に頑張らず内服してかまいません。
  3. 鼻水には、鼻かみ・鼻水吸引を励行してください。
    小さいお子さんの場合は、電動吸引器が便利です。
  4. 咳には、1歳以上の場合はハチミツが有効です。
    大人には気管支拡張作用のあるカフェイン入りの飲み物に鎮咳効果のあるハチミツを使用すると効果が得られると報告があります。
    ヴィックスヴェポラッブ®は昔からある市販薬です。寝る前に胸に塗り、蒸発した薬剤を吸入することにより、睡眠中の咳や鼻つまりをやわらげてくれます。
    痰がらみの咳や乾いた咳に対してうがいは効果があります。うがいのできないお子さんは、水分(水、麦茶、ミルク、母乳)を摂取することで、のどにからみついた痰を飲み込むことで楽になります。また、加湿器を使用してお部屋の湿度を保つことも重要です。

 
風邪の治療にどれくらい効果があるか研究があります。その結果は、以下の通りでした。
「せき止め薬を使う児と使わない児を比較すると、咳止め薬を使った児の方が、咳が悪化した」

近畿圏の小児科14施設で行った調査結果で論文として発表された内容です。外来小児科 (1345-8043) 22巻2号 Page124-132(2019.05)
 
よく見かける咳止め薬の多くは50年以上前からあるもので、(「メジコン」は1956年、「アスベリン」は1965年に発売)、これらの古い薬は、本当に人に効果があるのかきちんと検証されたことがありませんでした。
そこで初めて、薬を飲んだ人と飲まない人の症状を比較する調査が行われました。その結果、咳止め薬「アスベリン」を飲んだ方が、①咳が悪化したという回答が多い②咳がよくなったという回答が少ない③咳の改善度も悪い、という結果でした。
 
風邪薬の副作用としては以下の報告があります。

  1. 2005年死亡した乳児から基準値を超える風邪薬の成分(pseudoephedrine, dextromethorphan,など鎮咳薬)を検出しました1)。これをうけて2008年アメリカでは、保護者に対して、2歳未満に市販の風邪薬(OTC薬)を飲ませないことを強く推奨し、4歳未満の市販薬が推奨されなくなりました2) 。日本でも2009年「2歳未満の乳幼児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。」という注意喚起に加え、「15歳未満の小児全体に対して、服用させる場合には、保護者の指導監督の下に服用させること等、幅広く適正使用に関する情報提供を行うことが適当」と厚労省から提言されています3)。
  2. 鼻水止め=抗ヒスタミンについては、熱性けいれんガイドラインでは、熱性けいれんの時間が長くなる可能性があるため、「注意すべき薬剤」とされています。特に乳幼児にはお勧めできません。

1)Infant Deaths Associated with Cough and Cold Medications — Two States, 2005; MMRW Weekly January 12, 2007 / 56(01);1-4
2)An Important FDA Reminder for Parents: Do Not Give Infants Cough and Cold Products Designed for Older Children
3)厚生労働省医薬食品局安全対策課:一般用医薬品(かぜ薬(内用)、鎮咳去痰薬(内用)、鼻炎用内服薬のうち、小児の用法を有する製剤)の小児への使用に関する注意喚起について.平成21年11月2日

 
 これらの研究や報告を踏まえて当院では風邪に対する薬を小さなお子さんには積極的に処方していません。また、お子さんの状態や年齢によって処方内容を変えています。
その理由は、3歳未満のお子さんは腎機能が未熟なため大人と同じ様に腎臓から不要物が排出されないこと、小さいお子さんの体での薬の代謝がよくわかっていないことが多いからです。
鼻水でウイルスを流し、咳は肺の痰を出し気管支炎・肺炎にならないようにする防御反応です。病気を治すために必要な反応で、止める必要はないのです。時間とともに改善していきます。
薬は症状緩和を期待するもので、治療薬ではないのです。
薬のご希望がある場合は、保護者の方と相談の上で処方します。

 余談ですが、鎮咳薬に効果がない研究報告がされたとき、自分が子どもの時に咳がつらい時、当時咳止めの粉薬はとても量が多く飲むだけでもとても大変で、頑張って飲んだのに咳は止まらなく内服がつらかった思いだけが記憶に残っていました。研究報告を知り咳止めは全く効果がなかった経験は事実だったとわかりとてもすっきりしました。

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