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食物アレルギーとアトピー性皮膚炎

食物アレルギーの原因は考え方が次々に変わってきました。
現在の考え方はありますが、今後研究が進むとまた変わる可能性もあります。
今までの考え方の変化と現在考え方について説明します。
 
1970年前後は子どもが食物(抗原)を食べて、体に抗体ができ(感作)、反応が起こるという考えでした。「食べ物説」です。
1970年から1980年かけて、母乳や牛乳を飲んだことがない赤ちゃんが飲んで嘔吐、下痢、血便、ショックを起こし、中止すると良くなる報告が世界からあり、アレルギー性腸炎、食物蛋白依存性胃腸炎症候群と言われていました。
1980年頃から特異抗体測定が可能になり、卵などを抗体測定で特異抗体RASTスコアが数値で出るようになりました。

この頃は赤ちゃんが食物アレルギーを発症するのは、妊娠中に母親が原因となる食物を食べたからと考えられていました。しかし妊娠中の母親が様々な食物を食べないようにしても、生まれてきた赤ちゃんが食物アレルギーを発症することがわかり、妊娠中の母親の食べ物は原因ではないことがわかりました。
その後「食物アレルギーは皮膚からアレルゲンが侵入して発症するのではないか?
(経皮感作説)」という新しい仮説がイギリス人の学者から提唱されていました。(ピーナッツオイルクリームを皮膚に使用して、ピーナッツアレルギーを引き起こすことからです)

2011年頃に日本で「茶のしずく石鹸事件」が起こりました。茶のしずく石鹸を使っていた人達が、次々に重篤な小麦アレルギーを発症した事件です。

「茶のしずく石鹸事件」は経皮感作説を証明することになり、「経皮感作」説に変わりました。石鹸に含まれていた小麦アレルゲン(グルパール19S成分)が洗顔の度に皮膚を通して体内に入り込み、小麦アレルギーを誘発しました。この石鹼を使い始めるまで普通に小麦を食べていた人が、茶のしずく石鹸を使うことにより、突然小麦アレルギーを発症したのです。
現在はこの「経皮感作説」、アレルゲンの皮膚への接触により食物アレルギーになるという考えです。「皮膚説」です。
皮膚からの感作を防ぐには湿疹をコントロールすることが重要です。

ステロイド軟膏などを使用して皮膚の状態を良くしておくことが皮膚からの感作を防ぐことになります。湿疹の赤みには小さな傷が沢山あり、そこから抗原が入ってしまいます。
赤ちゃんは床でハイハイをします。家の中の床には沢山の抗原が落ちています。どんどん皮膚から感作されていきます。
2019年に日本の1000%の家庭の子どもの寝具から鶏卵アレルゲンがダニより多く検出されたと調査報告がされました。それほど家の中には抗原物質が存在しています。
また、口周りに湿疹があるお子さんは食べている時にその湿疹から感作が起きるため、口周りの湿疹もよくすることが重要です。

以前は特異抗体RAST陽性を根拠に食物除去が行われていました。
この陽性はその食物などに感作されていることを表しています。検査陽性でも食べて症状がなければアレルギーではありません。検査陽性はよくあることで、それだけ皮膚感作が起きていることを示します。
現在は食べて症状があることで診断します。家庭での症状や経口負荷試験で症状がある場合です。そして「必要最小限の原因物質の除去」が大切です。


保育保健協議会で行われたアレルギー調査で、0歳から1歳くらいのお子さんは10%弱、3歳で50%位、小学校に入る前に2%になり、食物アレルギーが減っていくことがわかりました。
しかし、茶のしずく石鹸事件で大人になってから発症することがわかりました。
食べ物説の時はアレルギー原因になる食材は離乳食で遅らせることが推奨されていましたが、
皮膚説では、開始を遅らせる方がアレルギーを発症しやすいことがわかってきました。除去を続けるより、食べられる量を食べ続けるとよくなっていく、食べて治すという考えです。
離乳食開始時期も早い方がいい、遅くした方いいと紆余曲折ありましたが、現在は遅らせる方がアレルギーを発症しやすくなる考えで、5か月から始めることがよいと考えられています。
イギリスではピーナッツを生後4〜6か月から始めるとピーナッツアレルギーは減少することがわかりました。

日本でも卵は遅く始めるより早く始めた方が卵アレルギーを減らすことがわかってきました。

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